ビットコインの仕組みの根幹であるブロックチェーン。
ブロック(塊)とチェーン(鎖)だからなんとなく意味が想像できるものの、実際にどういった仕組みなのかを完全に理解されている方はそう多くありません。
また、ブロックチェーン=ビットコイン(仮想通貨)と思っていらっしゃる方も少なくありません。
ここではブロックチェーンとは一体どういう技術なのか、そしてブロックチェーンを用いたビジネスモデルについて解説していきます。
ブロックチェーンとは
ブロックチェーンは現在主流であるサーバー型データベース管理の問題点を解決する技術として非常に注目されています。
ビットコイン=ブロックチェーンという訳ではなく、ビットコインを始めとする仮想通貨はブロックチェーン技術を使った代表的な取り組みのひとつです。
サーバー型データベースの限界点
これまで銀行などの取引・顧客データ管理データベースは、大量のアクセスによるサーバーダウンや外部からのハッキング攻撃のリスクを防止するために、膨大な額の維持・保守費用がかかっていました。
にもかかわらず、ちょっとしたミスや穴に付け込まれて個人情報の大量流出事件などが相次いでいます。
データは日々複雑化し、かつ無尽蔵に増え続けています。このため、現在の管理システムでは近いうちに限界がやってきます。
分散台帳技術
このサーバー型データベース管理に取って代わり主役に躍り出ようとしているのが、ブロックチェーンと呼ばれる「分散台帳技術」です。
これまでのようにデータを一部に集約させるのではなく、不特定多数の何百万台というPCに同じデータを分散して保管することで不正・改ざんを事実上できなくするシステムです。
管理者がいない?
データを分散させるというある意味フラットな構造は、1点集中型のサーバーと違い管理者が存在しません。
この「管理者不在」という仕組みは仮想通貨と非常にマッチしており、一番のメリットであるといえます。
たとえば国(中央銀行)が管理している通貨は、管理権限によってマネーサプライ(流通している通貨の量)をコントロールされるため、国の情勢によって価値が変動してしまいます。
ところが仮想通貨の場合、管理者が不在となるためマネーサプライのコントロールは非常に難しくなります。
ビットコインは2140年までに2100万BTCという発行上限を決めており、時価総額第2位のイーサリアム(Ether)も発行上限を決めるといった話が持ち上がっています。
パブリック型とプライベート型
ブロックチェーンは管理者不在というお話をしましたが、すべてのブロックチェーンがそうではなく仮想通貨においても管理主体があるものもあります。
ブロックチェーンはパブリック型とプライベート型に分類され、前者は管理者が不在かつ取引データが全世界に公開されています。
一方、後者は管理者が存在し取引データが非公開なブロックチェーンです。
一般的に会社などの組織が使用し、一般の方は取引データを見ることができません。
さきほど管理者不在による仮想通貨のメリットを挙げましたが、実はプライベートブロックチェーンによる仮想通貨も存在します。
代表的なのがリップル(XRP)です。
プライベート型でありながら一般の方でも取引ができるので人気がありますが、仮想通貨誕生の原点を考えると少し逆行しているとも言えますね。
不正・改ざんを防ぐデータ構造
※この項目は専門的になるので読み飛ばしていただいて結構です。
ブロックチェーンが仮想通貨と相性が良いのは「管理者不在」ということと、もうひとつは「不在・改ざんの余地がない」ということです。
そのカギとなるのがハッシュとナンスです。
ハッシュ値
ハッシュ値とはデータを固定長のデータに変換した値のことで、膨大なデータであってもハッシュ値を比較することで改ざんがあったかどうか瞬時に見分けることができます。
ビットコインでは約10分ごとに取引データ(トランザクション)のブロックが生成されていき、そのブロックをチェーンのように繋いでいきます。
その過程でAで生成されたブロックが正しいかどうかをハッシュ値で判断し、正確な情報を次のブロックに持ち越すことができます。
またハッシュ値は「データを一方向にしか演算できない」といった特徴を持っているため、前のデータに戻ることはほぼ不可能です。
そして1文字でも変更すると全く違ったデータとなるため、以前のデータを推測することもできません。
ナンス
ナンスとは「Number used once」の略称で、一度だけ使用される使い捨ての数字のようなものです。
ブロックには、
- 直近10分間の送金リクエスト
- ハッシュ値
- ナンス(256桁)
が格納されており、このナンスを探し当てたマイナー(採掘者)に報酬が与えられます。
プルーフオブワーク(PoW)
このような一連の流れをプルーフオブワークと呼び、仕事の証明とも呼ばれます。
「データを不特定多数のPCに分散」させ、「ハッシュ関数を用いてデータの改ざんを防止」し、「ナンスを用いて取引の証明」を行わせるといったプロセスが、ブロックチェーンをより強固にさせています。
ブロックチェーンの課題・問題点
ブロックチェーンの仕組みを簡単に解説してきましたが、この技術ができてから歳月も浅いことから問題点もいくつかあります。
トランザクション性能が悪い
ビットコインは今や世界中で取引されていますが、パブリックブロックチェーンであるため悪意を持った人手さえも容易に参加が可能です。
このため上記のような一連の流れを踏む必要がありますが、その分構造が複雑化し処理速度が極端に遅くなってしまいます。
仮想通貨は「世界中の人と同一通貨で決済ができる」というメリットを持ちながらも、現状の処理性能では色んな弊害が出てしまいます。
マイナー増加による電力消費
ビットコインを始めとする仮想通貨は1,000種類とも3,000種類とも言われています。
年々参加者が増え続け、マイニングにかかる電力消費も増加の一途を辿っています。
ネットワークの速度・容量は日進月歩ですが、ブロックチェーン技術に追い付いていない状況で、このままだと取引が一向に進まない状況に追い込まれることも考えられ、そうなるとビットコインの価値そのものに疑問符がついてしまう可能性もあります。
ブロックチェーンまとめ
ブロックチェーンは新技術として様々な分野で開発・テストが進んでいます。
たとえば個人情報を司るマイナンバーや医療分野でのデータベース構築などもブロックチェーンを活用する将来が待っているかもしれません。
一方でレスポンスの悪さやデータベースの肥大化などのクリアすべき課題もあります。
仮想通貨分野は導入期ともいえる状態ですが、これから成長・成熟段階に向けて生き残っていくのは、こういった課題を乗り越えていける通貨になるでしょう。