ビットコインは対円であるBTC/JPYのトレードが日本人にとってはメジャーとなりますが、対ドルのBTC/USDもあります。
双方とも取引量は日々増えてきており、2018年1月のデータではともに日当たり8万BTCほどの取引量となっています(対ドルの方が少し多い)。
これだけの取引があれば大口投資家による売り買いでもさほど影響はなくなり、ノイズは少なくなってきています。
そこでふと思ったのが、株式やFX投資での常套手段である「裁定取引(サヤ取りとも)」が可能なのではないか、ということ。
簡単にいうとBTC/JPYを買い(または売り)、BTC/USDは売る(または買う)といった手法です。
裁定取引(サヤ取り)トレードとは
裁定取引という言葉に慣れていない方のために簡単に説明をしておきます。
裁定取引のほかにも「サヤ取り」「アービトラージ」「ロングショート」「ペアトレード」などとも呼ばれますがどれも一緒と考えてもらっても大丈夫です(実際には細かい違いがあります)。
主に金利差や価格差を利用した投資手法で、株式投資であれば「相関性の高い(動きが近い)2つの銘柄の価格差が開いた時、元に戻ろうとする動きを狙う」といった戦術です。
他にもFXの有名どころでいえば「取引所によって違うスワップ益(ドル円が70円と30円など)を買いと売りで為替差損を相殺させながら、スワップ金利差だけ貰う」といった手法もあります。
裁定取引はリスクを軽減しつつミドルターンを狙う投資方法で、古くから存在しているトレードです。
これをBTC/JPYとBTC/USDで組み合わせたらどうなるのでしょうか?
ビットコインの理論価格とは?
ビットコインの裁定取引を考える前に、まずビットコインの理論価値について考えてみます。
ビットコインはマイニング(採掘)によって発行されますので、「マイニングにかかった電力=ビットコインの価値」と考えることができます。
ただ、それであればビットコインは誕生したときから2140年の発行終了まで価値が上がり続けるという前提が出来上がってしまうので、少々ムリがあるのではないかと感じます。
そもそもBTC/JPYにしろBTC/USDにしろ、対円(ドル)での取引となるので基軸となるのは円またはドルです(もちろん対ユーロなどもあります)。
であれば無理にマイニングの電力などで計算しなくても為替相場であるドル円から導けば、ある程度のビットコイン理論価格は求めることができます(ビットコインに価値があるという前提)。
BTC/USDをBTC/JPYで割る
この記事を書いているのは2018年1月13日です。
前日のドル円終値は111.03円(Yahoo!ファイナンス)で、BTC/JPYは1627000円前後、BTC/USDは14650ドル前後でした(ともに1月13日の午前6時)。
BTC/USDをBTC/JPYで割ってみると111.06となり、ドル円相場とほぼ同じ価格であることが分かります。
このことからビットコインは「対円でも対ドルでもドル円レートに連動しているのでは?」という仮説が導き出されます。
購買力平価は成り立つのか?
昔「ビックマック指数」なんて言葉がありました(今でもあります)。
その国に経済力を測るために、マクドナルドのビッグマック価格を調査したもので、購買力平価説を説くときによく使われる言葉でもあります(絶対的と相対的の2通りの考え方があります)。
たとえば日本のビッグマックが380円だとして、アメリカは日本円換算で600円だとしたら、為替相場は1ドル158円(600÷380×100)が妥当であるという考え方です。
(実際にはそうはならず、実勢為替価格とは大きく乖離することが多い)
このようにほぼ同一品質で提供されるビッグマックでも大きく為替相場と乖離があるのに、ビットコインでは成り立つかどうかは不明ですが少し強引に進めていきます。
2017年12月の爆上げ時はどうだった?
以下は左からBTC/JPY、BTC/USD、ドル円、BTC/JPY÷BTC/USDの終値です(2017年12月)。
そして一番右にはドル円と、BTCで計算された理論価格の差を算出しています。
先に付け加えておくと、ビットコインの価格は当日の午前0時なので、ドル円の終値は翌日の数値としてずらしています。
またドル円の土日は金曜と同じ価格として算出しています。
他にも時間のズレはありますがご容赦ください。
12/31で計算してみると、(BTC/JPY)1520000÷(BTC/USD)12750.12=119.2となるので、実際のドル円とは1万ドルあたり83444円の乖離が発生しています。
一番差が開いたのが12/8で、BTC/JPYは前日の156万円から一気に221万円へと値を上げています。
このときドル円との価格差は24万円も開き、1ヵ月単位のデータとしては乖離しすぎで、この差は縮小方向へ向かうのでは?と考えることができます。
そこでBTC/JPYを2210000円で売り、BTC/USDを17412.12ドルで買うという裁定取引を行います。
本来なら買いと売りの金額差は無くすべきですが、ここでは簡略化するために対円では1BTCを売り、対ドルでは1.13BTC買いとします。
その後予想通りに価格差が縮小され、12/13にほぼゼロとなるのでここで裁定取引を解消すると、
BTC/JPY=2210000⇒1963999
プラス136001円
BTC/USD=17412.12⇒17297.75
マイナス14672円(為替価格などを加味)
となり、トータルではプラス121329円となりました(手数料などは一切含まれておりません)。
損切設定をしていないとロスカットもあり得る
上の項では2017年12月のデータを基に裁定取引の一例を紹介してみましたが、もう少し長い期間で見るとどうなるのでしょうか?
どうやらそう簡単には聖杯は見つけられないというのが結論です。
実は過去に遡ってみると、2017年5月にBTC/JPYとBTC/USDの価格差は大きく乖離し、しばらく収束してこないという状況がありました。
もしこの時に上記のような裁定取引を行っていたら、シミュレーションはしていませんが資金はすっ飛んでいたでしょう。
やはりどんなトレードをしていても損切設定は必要で、100%勝つというトレードは存在しませんね。
とはいえひとつの投資手法として頭の中に入れておくのも良いですね。
たとえば買い専門で売るつもりはないよという方も、新規購入の際のポイントとしてBTC/JPYだけでなくBTC/USDの動向も見ておけば、今までと少し結果が変わってくるかもしれません。